「図面に『リーマ加工』という指示があるけど、ドリルで穴を開けるのと何が違うんだろう?」
リーマ加工は、ドリルで開けた穴をさらに精密に仕上げるための加工です。ドリルだけでは出せない高い寸法精度・滑らかな内面を実現するために、機械加工では欠かせない仕上げ工程の一つです。
この記事では、リーマ加工とは何か、穴の精度を高める仕上げ加工を解説します。
- リーマ加工とは何か
- なぜドリルだけでは精度が出ないのか
- リーマの種類
- リーマ加工の手順と失敗しやすいポイント
- リーマ加工が使われる現場・製品
リーマ加工とは何か
リーマ加工とは、「リーマ」と呼ばれる専用工具を使い、すでに開けられた穴の内面を精密に仕上げる加工のことです。ドリルで開けた穴に対して、最後の仕上げとして行われることが一般的です。
- 下穴あけ:ドリルで、リーマ加工に必要なサイズより少し小さめの穴を開ける
- リーマ通し:リーマ工具を穴に通し、内面をわずかに削りながら仕上げる
- 完成:高精度な寸法・滑らかな表面を持つ穴が完成する
「ドリルで穴を開けて終わり」ではなく、「その後にリーマでさらに精度を高める」という2段階の加工が必要な場面で使われます。
なぜドリルだけでは精度が出ないのか
「ドリルで穴を開ければ十分では」と思うかもしれませんが、ドリル加工には精度面での限界があります。
- 寸法のばらつき:ドリルは構造上、穴の寸法が公差の範囲内でもややばらつきやすい
- 内面の粗さ:ドリルで開けた穴の内面は、リーマ加工と比べると粗く、滑らかさに欠ける
- 真円度・直進性の限界:ドリルだけでは、穴が完全な円形・まっすぐな状態になりにくい場合がある
「軸を高精度にはめ込む穴」「滑らかな摺動が必要な穴」など、高い精度が求められる箇所では、ドリル加工だけでは不十分なため、リーマ加工で仕上げる必要があります。
リーマの種類
リーマにはいくつかの種類があり、用途や加工方法によって使い分けられます。
- 手リーマ:手作業で回しながら仕上げる、先端がテーパー状になったリーマ。少量生産・修理現場で使われる
- 機械リーマ(マシンリーマ):NC機械・ボール盤などに取り付けて使う、効率的な量産向けのリーマ
- テーパーリーマ:円錐状(テーパー状)の穴を仕上げるためのリーマ。位置決めピン穴などに使われる
- 調整リーマ:刃の出し幅を微調整できるリーマで、わずかな寸法調整が必要な場合に使われる
「手作業か機械か」「ストレート穴かテーパー穴か」によって、適切なリーマを選ぶ必要があります。現場では、加工内容に応じて使い分けられています。
リーマ加工の手順
- Step 1:図面で求められる最終的な穴径・公差を確認する
- Step 2:リーマ加工に必要な、適切な下穴径をドリルで開ける(リーマの取り代を考慮する)
- Step 3:適切な切削油を使用し、リーマを穴にゆっくりと通す
- Step 4:一定の速度・送りでリーマを進め、内面を仕上げる
- Step 5:加工後、内径・表面粗さを測定して、規格通りに仕上がっているかを確認する
「下穴の精度」が、リーマ加工の仕上がりに直結します。下穴が曲がっていたり、サイズが大きくズレていたりすると、リーマで修正しきれない場合があるため、下穴あけの段階から丁寧な作業が求められます。
リーマ加工で失敗しやすいポイント
- 取り代(しろ)の設定ミス:下穴とリーマ後の穴径の差(取り代)が適切でないと、削りすぎ・削り不足が起きる
- 逆回転での引き抜き:リーマを逆回転させたまま引き抜くと、刃を傷めたり、穴の内面を傷つけたりする原因になる
- 切削油の不足:適切な潤滑がないと、内面が荒れたり、リーマの寿命が縮んだりする
- 送り速度・回転数の不適切な設定:条件が合っていないと、表面粗さが悪化したり、寸法がズレたりする
「リーマは仕上げの工具」という性質上、わずかなミスがそのまま最終的な精度不良につながりやすいという特徴があります。慎重な作業と、正しい条件設定の理解が欠かせません。
リーマ加工が使われる現場・製品
- 精密機械部品:軸とベアリングがはめ合う穴など、高精度が求められる箇所
- 金型・治具:位置決めピンが入る穴など、正確な位置精度が必要な箇所
- 自動車部品:エンジン・トランスミッションなど、精密な穴加工が求められる部品
- 組み立て用の基準穴:複数の部品を正確に組み合わせるための基準となる穴
「精度が製品の機能に直結する」という箇所で、リーマ加工は欠かせない仕上げ工程として活用されています。
取り代(しろ)という考え方
リーマ加工を理解するうえで欠かせないのが「取り代」という考え方です。
- 取り代とは:下穴の径と、リーマ加工後の最終的な穴径との差のこと
- 取り代が小さすぎる場合:リーマが穴の内面をうまく削れず、精度・表面粗さが期待通りにならないことがある
- 取り代が大きすぎる場合:リーマに大きな負荷がかかり、工具の摩耗・破損や、穴の精度悪化につながる
- 適切な取り代の目安:穴の径や材質によって異なるが、一般的に直径の数パーセント程度(0.1〜0.3mm前後)が目安とされることが多い
「ちょうど良い量だけ削る」というのがリーマ加工の繊細さであり、下穴あけの段階でこの取り代を正確に確保しておくことが、仕上がりの質を左右します。未経験のうちは、先輩が使っている下穴径の早見表・条件表を参考にしながら、適切な取り代の感覚を身につけていくとよいでしょう。
リーマ加工と他の穴加工方法との違い
穴を精密に仕上げる方法は、リーマ加工だけではありません。他の方法との違いを知っておくと、図面の意図がより深く理解できます。
- リーマ加工:すでに開いている穴を、専用工具で精密に仕上げる加工。比較的短時間で高精度を実現できる
- 中ぐり加工(ボーリング):旋盤やマシニングセンタの刃物で、穴の内径を少しずつ削りながら精度を出す加工。大きな径の穴や、特殊な径に対応しやすい
- 研削加工(内面研削):砥石を使い、さらに高い精度・滑らかさを求める場合に使われる。リーマより手間がかかるが、より厳しい公差に対応できる
「求められる精度・穴の大きさ・コスト」に応じて、これらの加工方法が使い分けられています。リーマ加工は、比較的効率よく高精度を実現できる方法として、多くの現場で重宝されています。
リーマ加工の技術が評価される理由
リーマ加工は精密な仕上げ工程であるからこそ、この技術を持つ技術者は現場で高く評価される傾向があります。
- 精密部品の製造に欠かせない技術:金型・精密機械の分野では、リーマ加工の技術がそのまま製品の品質に直結する
- 条件設定の経験値が問われる:適切な取り代・送り速度・切削油の選定など、経験に基づいた判断力が求められる
- 多能工化の一歩として重要:ドリル加工・タップ加工と合わせてリーマ加工も習得することで、穴加工全般を任される技術者になれる
「精度を出す」という技術は、金属加工の中でも特に専門性が問われる分野です。未経験から少しずつ経験を積み、こうした精密加工の技術を身につけていくことで、長期的なキャリアの幅を広げることができます。
未経験者がリーマ加工で意識すべきこと
- 下穴あけの精度を大切にする:リーマ加工の前段階である下穴あけが、最終的な仕上がりを左右することを理解する
- 正回転のまま引き抜く:リーマを抜くときは、逆回転させず正回転のまま引き抜くという基本動作を守る
- 測定をしっかり行う:加工後は必ず寸法・表面の状態を確認し、規格を満たしているか検査する
- 先輩の条件設定を参考にする:回転数・送り速度などの条件は、経験に基づいて決められていることが多いため、最初は先輩のやり方を観察して学ぶ
リーマ加工は、金属加工の中でも「最後の仕上げ」を担う重要な工程です。丁寧な作業の積み重ねが、製品の品質を支えていることを意識しながら、技術を身につけていってください。
リーマ加工に関するよくある疑問
リーマ加工とタップ加工は同じような作業ですか?
どちらも下穴に対して行う仕上げ加工という点は似ていますが、目的が異なります。リーマ加工は「穴の精度・滑らかさを高める」ことが目的で、ねじ山は刻みません。一方タップ加工は「ねじ山を刻んでボルトを締結できるようにする」ことが目的です。詳しくは「タップ加工とは?ねじ穴を作る作業と失敗しやすいポイント」もご覧ください。
未経験からリーマ加工を任されることはありますか?
企業によりますが、リーマ加工は精度が求められる工程のため、ある程度の経験を積んでから任されることが多い傾向があります。まずは基本的な切削加工・測定の技術を身につけ、段階的にリーマ加工のような精密作業へとステップアップしていくのが一般的な流れです。
まとめ
- リーマ加工とは、ドリルで開けた穴を精密に仕上げる加工のこと
- ドリルだけでは寸法のばらつき・内面の粗さ・真円度に限界があるため、リーマで仕上げる
- 手リーマ・機械リーマ・テーパーリーマなど、用途に応じた種類がある
- 下穴の精度・取り代の設定・正回転での引き抜きが、失敗を防ぐ重要なポイント
- 精密機械部品・金型・自動車部品など、高精度が求められる現場で活躍する
リーマ加工は、金属加工の精度を支える重要な仕上げ工程です。「下穴の精度がすべてを左右する」という基本を理解し、丁寧な作業を積み重ねることで、確かな技術を身につけていけます。
タップ加工については「タップ加工とは?ねじ穴を作る作業と失敗しやすいポイント」、寸法公差については「寸法公差とは?金属加工でなぜ重要なのかをわかりやすく解説」もご覧ください。

