溶接記号とは?図面で見る基本記号と現場での確認ポイント

「溶接の図面に、矢印と謎の記号が書かれているけど、これは何を意味しているんだろう?」

溶接記号は、図面上で「どこを」「どんな種類で」「どれくらいの大きさで」溶接するかを指示するための、世界共通のルールに基づいた記号です。溶接工として働くなら、避けて通れない基本知識です。

この記事では、溶接記号とは何か、図面で見る基本記号と現場での確認ポイントを解説します。図面全体の読み方は「金属加工の図面の読み方とは?未経験者向けに基礎を解説」もご覧ください。

この記事でわかること
  • 溶接記号とは何か
  • 溶接記号の基本構成
  • よく使われる溶接記号の種類
  • 補助記号の意味
  • 未経験者が溶接記号を覚えるためのステップ

溶接記号とは何か

溶接記号とは、図面上で溶接に関する指示(場所・種類・サイズなど)を、簡潔な記号で表現するためのルールです。JIS(日本産業規格)で定められており、どの企業の図面でも基本的に共通したルールで読み取ることができます。

溶接記号がある理由
  • 図面を簡潔にするため:「ここをすみ肉溶接で脚長6mm」という指示を、文章ではなく記号で簡潔に表せる
  • 誰が読んでも同じ理解ができるため:共通のルールがあることで、担当者が変わっても同じ指示として伝わる
  • 溶接の品質を保証するため:必要な溶接の種類・サイズが明確に指示されることで、品質のばらつきを防げる

「溶接記号が読めるようになる」ということは、「図面の指示を正確に理解し、再現できる」ということを意味します。溶接工としてのキャリアの中で、避けて通れない基本スキルです。

溶接記号の基本構成

溶接記号は、いくつかの要素が組み合わさって構成されています。まずはこの全体構造を理解しましょう。

基線・矢線

溶接記号の土台になるのが「基線」と「矢線」です。基線は水平な横線で、溶接の指示内容(種類・サイズなど)がこの線の上下に記載されます。矢線は、実際に溶接する箇所を指し示す矢印です。「矢線が指す場所」に「基線に書かれた内容」の溶接を行うという構造になっています。

溶接の種類を表す記号

基線の上または下に、溶接の種類を表す記号が書き込まれます。「すみ肉溶接」「V形開先溶接」など、溶接の断面形状によって異なる記号が使われます。記号が基線の下側にある場合は矢の指す側(手前側)、上側にある場合は反対側(奥側)の溶接を意味するというルールがあります。

寸法・数値情報

溶接記号には、脚長(すみ肉溶接の大きさ)・開先角度・ルート間隔など、具体的な数値も併記されます。これにより、「どれくらいのサイズで溶接するか」が明確に指示されます。

MEMO
寸法公差については「寸法公差とは?金属加工でなぜ重要なのかをわかりやすく解説」もご覧ください。

よく使われる溶接記号の種類

溶接記号には多くの種類がありますが、現場でよく使われる代表的なものを押さえておきましょう。

すみ肉溶接

直角に交わる2枚の板を接合する際に使われる、最も一般的な溶接方法です。記号は三角形で表され、その大きさ(脚長)が数値で併記されます。製缶・板金加工など、幅広い現場で頻繁に使われる溶接です。

開先溶接(V形・レ形・K形など)

板の端を加工(開先加工)してから溶接する方法で、厚板の突き合わせ接合などに使われます。開先の形状によって「V形」「レ形」「K形」などの種類があり、それぞれ異なる記号で表されます。強度が求められる構造物でよく使われる溶接方法です。

全周溶接・現場溶接の記号

「全周溶接(部材の周囲をぐるっと全部溶接する)」は丸い記号(○)で、「現場溶接(工場ではなく設置現場で行う溶接)」は旗のような記号で表されます。こうした補足的な指示も、溶接の品質・施工方法を正確に伝えるために重要です。

代表的な溶接記号のイメージ
  • すみ肉溶接:三角形の記号+脚長の数値(例:△6)
  • V形開先溶接:V字型の記号+開先角度・ルート間隔の数値
  • 全周溶接:基線と矢線が交わる箇所に丸印(○)
  • 現場溶接:基線と矢線が交わる箇所に旗の記号
MEMO
製缶工の仕事内容は「製缶工の仕事内容とは?未経験者向けに解説」もご覧ください。

補助記号(仕上げ方法などの指示)

溶接記号には、溶接そのものの種類だけでなく、仕上げ方法を示す補助記号が併記されることもあります。

主な補助記号
  • 仕上げ方法の記号:「グラインダー仕上げ」「平滑仕上げ」など、溶接後の処理方法を示す記号
  • 裏波溶接の記号:表側だけでなく裏側にも溶接ビードが形成されることを示す記号
  • 裏当て金の記号:溶接の裏側に補強材(裏当て金)を使用することを示す記号

補助記号まで含めて正確に読み取ることで、「どんな見た目・品質の溶接が求められているか」をより正確に把握できます。

図面での溶接記号の読み方の実践

溶接記号を読むときの手順
  • Step 1:矢線がどの箇所を指しているかを確認する
  • Step 2:基線の上下どちらに記号があるかで、溶接する側(手前か奥か)を判断する
  • Step 3:記号の形から、溶接の種類(すみ肉・開先など)を確認する
  • Step 4:併記された数値(脚長・開先角度など)を確認する
  • Step 5:補助記号(仕上げ・裏波など)がないか確認する

最初はこの手順を意識的に一つずつ確認しながら読むことで、徐々にスピーディーに読み取れるようになっていきます。

溶接記号を読み間違えるとどうなるか

溶接記号の誤読が招くトラブル
  • 溶接箇所の間違い:矢線の指す位置を見誤ると、本来溶接すべきでない箇所を溶接してしまう
  • 溶接の種類の間違い:すみ肉溶接と開先溶接を取り違えると、強度不足や形状不良につながる
  • サイズの間違い:脚長などの数値を見落とすと、強度不足や過剰な溶接(コスト増・変形のリスク)につながる

溶接記号の読み間違いは、構造物の強度に直結する重大なミスにつながりかねません。少しでも不安があれば、自己判断せず先輩・上司に確認する姿勢が大切です。

MEMO
溶接欠陥については「溶接欠陥とは?割れ・ブローホール・アンダーカットの基本」もご覧ください。

溶接記号と溶接方法(アーク・TIGなど)の対応関係

溶接記号は「どこを・どんな形状で」溶接するかを指示しますが、「どの溶接方法(アーク溶接・TIG溶接など)を使うか」は、別途、材質・部位・品質要求に応じて選定されます。この関係を理解しておくと、図面全体の意図がより深くつかめます。

溶接記号と溶接方法の関係
  • すみ肉溶接の場合:半自動溶接・アーク溶接など、汎用的な方法が使われることが多い
  • 精密さが求められる開先溶接の場合:TIG溶接など、より精密な制御ができる方法が選ばれる傾向がある
  • 材質による使い分け:ステンレスや薄板など、材質によって適した溶接方法は記号とは別に判断される

「溶接記号は形状・サイズの指示」「溶接方法は材質・品質要求に基づく選定」という役割の違いを理解しておくと、図面の指示をより正確に解釈できます。

溶接記号と検査の関係

溶接記号で指示された通りに施工できているかを確認するのが、溶接後の検査工程です。

溶接記号と検査のつながり
  • 脚長の検査:すみ肉溶接で指示された脚長が、実際に確保されているかをゲージなどで確認する
  • 外観検査:ビードの形状・表面の状態が、記号で指示された仕上げ条件を満たしているか確認する
  • 非破壊検査:重要な構造物では、超音波探傷・放射線透過試験など、内部の状態を確認する検査が行われることもある

「記号通りに溶接できているか」を確認するまでが、溶接という仕事の一連の流れです。図面の指示を正確に理解することは、その後の検査をスムーズに通過するためにも重要な基礎になります。

未経験者が溶接記号を覚えるためのステップ

未経験から溶接記号を覚えるステップ
  • Step 1:まずは現場で最もよく使われる「すみ肉溶接」の記号から覚える
  • Step 2:実際の図面を見ながら、先輩に記号の意味を確認する習慣をつける
  • Step 3:基線・矢線の関係(手前か奥か)を理解する
  • Step 4:開先溶接など、より複雑な記号にも少しずつ触れていく
  • Step 5:補助記号(仕上げ方法など)まで読み取れるようになる

溶接記号は種類が多く、最初からすべてを覚える必要はありません。「現場でよく出てくるものから少しずつ」という姿勢で、実際の図面に触れながら学んでいくのが、最も確実な習得方法です。

溶接記号に関するよくある疑問

溶接記号を覚えるのにどのくらい時間がかかりますか?

個人差はありますが、基本的なすみ肉溶接の記号であれば数週間〜数ヶ月程度で慣れてくることが多いです。より複雑な開先溶接の記号や補助記号まで含めると、数年かけて少しずつ身についていくものと考えてよいでしょう。焦らず、現場での経験を積み重ねることが大切です。

図面に記号がなく、口頭での指示だけの場合もありますか?

小規模な現場や簡易な作業では、口頭での指示が中心になる場合もあります。ただし、品質管理がしっかりしている企業ほど、図面に正確な溶接記号が記載される傾向があります。記号がない場合でも、必ず具体的な仕様(種類・サイズ)を確認してから作業することが重要です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 溶接記号は、図面上で溶接の場所・種類・サイズを指示するJIS規格に基づいた記号
  • 基線・矢線・溶接の種類記号・数値情報という要素で構成されている
  • すみ肉溶接・開先溶接(V形・レ形・K形)・全周溶接などの種類がある
  • 仕上げ方法・裏波溶接などを示す補助記号も併記されることがある
  • 未経験者は、よく使う記号から少しずつ、実際の図面を通じて学んでいくのが基本

溶接記号は、溶接工として働くうえで欠かせない基礎知識です。最初は複雑に感じても、現場で実際の図面に触れながら学ぶことで、確実に身についていきます。先輩に質問しながら、少しずつ理解を深めていってください。

溶接欠陥については「溶接欠陥とは?割れ・ブローホール・アンダーカットの基本」、図面全体の読み方は「金属加工の図面の読み方とは?未経験者向けに基礎を解説」もご覧ください。